さて現場で行われる検査ですが、実際どの薬が効くのか試験管内的に試す微量液体稀釈法などはさておいて、S.aureus特有のものをいくつかご紹介したいと思います。

まずはセフィナーゼディスク法(ニトロセフィン法)。ニトロセフィンとはセファロスポリン系抗菌薬の1つで、β‐ラクタマーゼによって化学構造が変化し赤く発色する特徴があります。これを用いてニトロセフィンが染み込んでいるディスクに新鮮なコロニーからS.aureusをつまようじなどで塗り付け、赤く発色したらβ‐ラクタマーゼ産生株ということがわかります。β‐ラクタマーゼ産生株ということはβ‐ラクタム環を有する抗菌薬を分解してしまうということで、MRSAとは違った機序で抗菌薬に対抗してくる菌株ということになります。

しかしこのセフィナーゼディスク法、感度にやや難ありということがわかり、新たに推奨されたのがディスクゾーンエッジテスト法です。ディスクゾーンとは簡単に行ってしまえば阻止円のことで、エッジとはそのまま「阻止円のふち」という意味です。ディスク拡散法のように培地に検査菌液を塗り、そこにペニシリンG(PCG)ディスクを置きます。培養後、阻止円が広めでふちがもやもやと判別しづらければ感性(S)、逆に阻止円が狭く、PCGディスクからある程度のところではっきりと阻止円のふちが形成されているようなら耐性(R)とされています。

もう一つS.aureusには重要な検査があります。それはDゾーンテスト(Dテスト)。これは通常の薬剤感受性では判別できないやっかいな性質を検査するものです。マクロライド系抗菌薬に対しての検査ですが、マクロライド系抗菌薬は科学的構造上大きく、14印環、15印環、16印環マクロライドに分けられます。

Dテストで使うのは14印環マクロライドに含まれるエリスロマイシン(EM)と親戚にあたるリンコマイシン系抗菌薬のクリンダマイシン(CLDM)です。

S.aureusが微量液体稀釈法など機器を用いた検査において、EM耐性、CLDM感性という結果を出してきたとき、一見「クリンダマイシンは効くのか」と思ってしまいます。しかし、これまたディスク拡散法で左にEM、右にCLDMをやや近づけて並べて配置し培養すると、耐性のEMの阻止円はもちろん小さいのですが、なんとCLDMの阻止円のEM側だけ阻止円が明らかに狭くなりCLDMの阻止円が「D」の形になる菌株がいます。これはマクロライド系抗菌薬であるEMによってS.aureusの遺伝子発現系にスイッチが入りCLDMまで耐性能力を誘導してしまうことが原因です。

この場合、感受性自動機器はEM:耐性、CLDM:感性と結果を出してくるでしょうが、臨床現場に対しては「CLDM誘導耐性株の為CLDMの効果が見られない可能性があります」などのコメントを添えてCLDM:耐性として結果を出すことが望ましいでしょう。

薬剤の種類や科学的構造が複雑になってきた昨今、検査も対応できるようにより複雑になってきています。一つ一つしっかり勉強していけば大丈夫です。

さて次回は初めて書籍のご紹介をしたいと思います。国試受験生時代に買ったものですが、新人時代から現在までお世話になっているグラム染色アトラスオススメの一冊となっていますのでお楽しみに。

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