さて前回の予告通り、黄色ブドウ球菌の中でも耐性菌として話題になるMRSAについて話そうと思います。

そもそもMRSAとは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus)の略称です。

MRSAの歴史は人間と細菌との戦いの歴史の縮図とも言えます。

従来のペニシリン系抗菌薬はペニシリン結合タンパク(PPenicillin Binding Protein)にペニシリンが結合することで細胞壁合成を阻害するというものでした。

抗生物質の発見という医療の大きな進歩となり、効果は高く瞬く間に世界に広がりました。

しかし、ペニシリンが世界に広まるとPC1といペニシリナーゼを作り、ペニシリンを分解するS.aureusが登場します。これは環状遺伝子であるプラスミド上に遺伝子があり、プラスミドの伝達によって菌同士に伝達され、ペニシリンが効かない株が多くなっていきました。対抗するため人類はペニシリン系抗菌薬のメチシリンを開発します。またS.aureusを倒す手段となりましたが、S.aureusもやられてばかりではありません。この時、ペニシリナーゼではない新たな武器を獲得しました。その仕組みは、細胞壁合成酵素であるペニシリン結合タンパク2’(PBP2’)という形の違う酵素を作ることでメチシリンなどのペニシリン系抗菌薬が結合できないようにしてしまうというものでした。

PBP2’の遺伝子mecAを含む遺伝子領域が、他の菌種から黄色ブドウ球菌に持ち込まれ、染色体上に挿入されたのが始まりだとされています。

結果、街中で感染する市中型MRSAはともかく、院内感染型MRSAはペニシリンだけでなく、セフェム系、カルバペネム系、ニューキノロン系、アミノグリコシド系薬剤など多剤に耐性となってきています。

MRSAになったからと言って、病原性が強くなり重症化するというわけではありません。しかし、前回もあげたように、S.aureusは体表面や鼻腔、腸管内に広く常在する菌で、人間の免疫とのバランスが崩れた時多くの疾患の原因になります。易感染状態の患者さん、高齢者・新生児では、効く抗菌薬が制限され、治療が難しく重症化する例が多いです。

検査法としては当初、オキサシリン(MPIPC)によるディスク拡散法が用いられていましたが、感度の視点から現在はセフォキシチン(CFX)ディスク(30μg)が日常検査では使われるようになってきています。この時阻止円が21mm以下であればMRSAとします。

もちろん話にあげたmecA遺伝子を検査してもいいですが、S.aureusの6割近くがMRSAとも言われてきた今では、日常的にその量の菌株を遺伝子検査するのは効率的とは言えないでしょう。

次回はもう少しS.aureusの現場に沿った検査のお話をしていこうと思います。

 


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