さて細菌最初は、王道にして奥の深い黄色ブドウ球菌を複数回に渡ってご紹介。

Staphylococcus aureusについてまず学生の皆さんに知っておいて欲しいことを列挙します。

6.5%NaCl耐性、カタラーゼ・コアグラーゼ・DNase、卵黄反応陽性。代謝産物としてクランピング因子(フィブリン析出効果)、エンテロトキシン(耐熱性外毒素)、TSST-1(毒素性ショックを起こす)、皮膚剥脱毒素(熱傷様皮膚症候群:SSSSを起こす)、溶血毒素(ヘモリジン)、白血球滅殺毒(ロイコシジン)など多くを産生します。

ヒトの皮膚、腸管、鼻腔などに常在し、健康な人であれば悪さもしないありふれた菌です。問題はケガをして皮膚が破壊されたとき、あるいは免疫力が低下していてカテーテルなどで異物を体内に挿入したときです。このS.aureusのもつ特徴の一つに「異物・外傷を好む」という性質があります。なので傷口の化膿や蜂窩織炎、重症糖尿病の壊疽、肺炎、骨髄炎、心内膜炎、術後感染症、カテーテル関連血流感染症など多くの感染性疾患を引き起こします。

実際の現場ではグラム染色で陽性球菌が観察され、カタラーゼ試験陽性、培地ではクリーム色からやや黄色味を帯びたコロニーで独特の臭気があれば十中八九黄色ブドウ球菌でしょう。

施設によってはラテックス凝集検査キットやマンニット食塩寒天培地を用いて同定しているかと思います。血液寒天培地での溶血は同じS.aureusでも菌株によって陽性だったり弱かったりなかったり、程度がまちまちなのであまりあてにはできません。またヒトではなく動物から良く検出されるS.lugdunensisも似たコロニーを作り性状を示すため細かな確認試験で比較しなければならないでしょう。

膿や喀痰、関節液や血液など全身の検体から検出されるように便からも検出されます。

この時大切なのは多くの腸内常在菌の中に少量混ざっている程度なのか比較的目立つ量が検出されているのかです。多い量が検出されている場合食中毒症状の原因となっている可能性が高いですよね。またS.aureusは検出されていないのに臨床的には黄色ブドウ菌性食中毒を連想する事態があります。

これは始めにあげた耐熱性のエンテロトキシンが原因となります。代表的な毒素性食中毒を起こす菌としてS.aureusClostridium botulinumがありますがC.botulinumが産生するエンテロトキシンは易熱性で加熱処理で無毒化できます。対してS.aureusuが産生するエンテロトキシンは耐熱性のため、加熱処理して菌が死滅しても毒素は残り続けてしまいます。病原性細菌が腸内で時間をかけて増えて起こる細菌性食集毒とは違い、一定量の毒素が摂取されれば1~8時間程度で症状がでてしまう・・・結果、菌は検出されないが食中毒が起きる状態が出来上がってしまいます。

調理する手、傷のできやすい手先、傷に集まりやすいS.aureus(しかも食塩に強い)、加熱しても残る毒素・・・

あくまでS.aureusが普段常在している以上の、偏った量が存在した時に、食中毒を引き起こす量の毒素量になる訳ですから、神経質になることはありません。

ですが傷のある手で直接握ったおにぎりなどは気を付けるようにした方がいいかもしれませんね。

さて次回はS.aureusの別の顔、MRSAについて書こうと思います。

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